事故直後は、負傷の痛みを感じられないことがある!
必ず病院に行き医師の診断を受けておくべきもうひとつの理由は、負傷者が痛みを感じられない状況にあるかもしれない、ということです。
この状況はさらに2パターンに分かれ、ひとつは明らかに負傷を負っているのに痛みを感じていないもの、そして痛みや症状がすぐには現れない負傷である場合です。
興奮状態では、痛みを感じない
交通事故の直後は、大抵の人は突然のアクシデントに遭遇したことで興奮状態にあります。
実際に、負傷の程度は軽そうだけれども念のために病院へ行こうということで、自分の足でスタスタと救急車に乗り込んだ人が、救急車に乗っている間に興奮が醒め、病院に着いた頃には痛みを自覚し始めて、自力で立つこともできなくなり、結局ストレッチャーで処置室に運ばれた…、という話もよくあります。
打撲や捻挫どころか骨折していても、事故直後の興奮状態では痛みを感じなかったという人も実在しますので、事故現場で何ともないという負傷者の感覚は信用しない方が良いでしょう。
それは自分であれ、同乗者であれ、事故の相手でも同じことが言えるので、注意深く対処する必要があります。
アドレナリン分泌により、痛みを感じない状態に?
交通事故後などの興奮状態には、人間の体内にはアドレナリンやβエンドルフィンという物質が分泌され、痛みを感じにくくなると言われています。
アドレナリンとは副腎髄質から分泌されるホルモンで、興奮状態に血液中に放出され、身体のエネルギー代謝や運動能力を高めることで知られています。
特に危機や不安、怒りを感じることによって分泌されるもので、火事場のバカ力として知られるように、血糖値上昇、心拍数や血圧上昇をもたらし、痛覚を麻痺させる働きもあります。
交通事故後の興奮状態で、アドレナリンが負傷の痛みを感じなくさせている可能性があるのです。
鎮痛作用のあるβエンドルフィンの働きも?
また、人間が危機に遭遇し、身体が損傷した時に分泌されるβエンドルフィンという物質の働きがあるとも言われています。
この物質は脳内麻薬と呼ばれるほど鎮痛作用が強く、興奮が収まり落ち着いて分泌されなくなると、痛みを感じて失神してしまうほどの効果があるとされています。
これらの物質の効果はまだ解明されていない部分も多く、必ずしもすべての負傷者にこの現象が現れるわけではありませんが、負傷しているのに痛みを感じていない時は、一時的に痛覚が麻痺していると考え、すぐ病院に向かうようにしましょう。
事故直後に痛みを感じない負傷には、重篤なものもある!
交通事故直後から時間が経過し、症状が現れる負傷で最も有名なのは「むち打ち」です。
「むち打ち」の正式名称は頸椎捻挫、または外傷性頚部症候群です。
自動車の衝突や急停車で首が「むち」のようにしなって起こる負傷なので、一般的には「むち打ち」と呼ばれていますが、首の痛み、肩こり、可動域制限、吐き気、耳鳴り、めまいなどの多様な症状が出ることと、最初は本人が自覚していないことが多いのも特徴です。
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